人類が月に降り立ったのはもう、25年も前の話し。当時、小学生だった僕はひどく興奮したことを覚えている。だけど、人類が月に降り立つ前にもいろいろ興奮することはあったらしい。例えば、人類が打ち上げた人工衛星が初めて月の裏側を撮影した時。地球にいる限り人類は月の裏側を見ることはできない。月は自転していないので地球にいつもおなじ面を向けているからだ。いや、正確に言うと、自転していないのではなくて月が地球の回りを回る周期と月自身の自転の周期が一致しているのである。これは偶然だろうか?星のことは何も解らない人類だが、この程度のことは答えられる。答え:「自分よりずっと大きな星の回りを回っている星は遅かれ早かれ一定の面だけを大きな星に向けて回るようになる」
この現象の犯人は潮斥力である。潮斥力というのは潮の干満を引き起こす力。潮が満ちているか引いているかは、月が頭上にあるか水平線の方向にあるかで決まるのである。で、潮が満ちたり引いたりすれば、海の水と海底がこすれあって摩擦が生じる。つまり、地球の自転はこの摩擦の分だけだんだん遅くなっているのである。月には海はないけれど、硬い岩だって多少は変形する。もし、海水があれば動くべき方向に引っ張られるのである。地球にとって月は小さいが、月にとって地球はとてつもなく、大きく、強い。その力で月の山がひっぱられたり押されたりするのだから月にとっては結構大変なことなのである。押されたり、引っ張られたりしないで済ますにはどうすればいいか?要するに月から見て地球がいつも同じ位置にあればいいのである。つまり、いつもおなじ面を向けている、というわけで、月がいつも地球の方を向いているのは必然なのである。ちなみに、月から地球を見れば地球はいつも同じ場所にいることになる。したがって、地球が見えている限り、月では迷子になるということはありえない。いつも、自分が月のどこにいるか知ることができる。