....というのは勿論、嘘である。この計算のおかしいところは、人類の数の増大を全く無視しているところである。「人類一人当たり30人」の計算方法は以下のようにして行われた(のであろう)。まず、人類発祥の時代以来、生存していた全人類の数を何らかの推定で数える。そして、これを現在の人間の数で割る。これが「30人」という言葉の意味である。人類が初めて誕生したときに既に30億人いてそのまま人口が増えずに1000年経過すれば確かに人類は発祥から1000年後に「人類ひとりあたり30名」が実現するが、そんなわけはない。通常、生物の個体数というのはいわゆる「鼠算式」に増えてくるものだ。ひとつがいの親(つまり、2名)から4人の子供が成長して大人になり子供を作れば孫の世代は8人、ひ孫の世代は16人、というわけだ。人類の場合はどうだろうか?ちなみに、人類が農耕を始めた1万年前には世界中合わせてもたかだか一千万人程度の人間しかいなかったらしい。これが鼠算式に増えて、現在50億になったとすると、3000年前には何人いたことになるだろうか?答えは、7億人程度。だから、過去千年間だけ取っても人類の数はとても一定とは言えず、さっきの計算は成り立たないわけだ。実際には産業革命で人口の増加率は爆発的に大きくなっていて過去一万年の間、一定の「鼠算」で増えてきたわけではない。つまり、1000年前の人口はもっと少ない。実際には、マルサスが人口論を著した100年か200年前になってやっと、5億人くらいになったのである。