マスコミで新型の科学博物館として持てはやされる科学技術館。何がそんなに新しいのか、実際に訪れる術の無い東京圏外在住読者代理の意味も込めてインタラクティブ・サイエンス・コラムがその魅力を解明する。
かつて、MACBINに存在した人気企画「情報空間の散歩道」を覚えておられるだろうか?博物館のバーチャルツアーをCD-ROMで楽しもうと言うものである。「いずれ復活する」という噂もあり、また、不定期には変則的な形で掲載もされてきた。しかし、本格的な再開が待ち切れないインタラクティブ・サイエンス・コラムでは自らこの企画を復活させるという暴挙に出た。しかし、サイエンスコラムであるからなんでもいいというわけには行かない。そこで、今回は新型の科学博物館として注目を集めている科学技術館の目玉イベント、大道芸さながらの科学パフォーマンスをレビューすることにした。
超低温の世界 by 嵯峨 |
燃焼と大気の科学 by 鈴木 | |
石油からできるモノ by 永井 |
面白科学実験室 by 米村 |
インターネットだ、マルチメディアだ、と言っても結局は究極のインタラクティブマシーン、人間にはかなわない。その魅力はCD-ROMタイトルといえども、完全にはお伝えできない。小学生のお子様をお持ちの方など、一度、子づれで訪れられてはいかがだろうか。あなたの子供の理科嫌いも一発で(?)直るかも知れない。
実験 1 美しく咲いているバラの花。これをほんの2秒ほど液体窒素の中につけて[39K]取り出す効果のほどは? |
1. 生き生きと甦り、さらに美しい色で咲き誇る。 2.一瞬で萎びて枯れてしまう。 3.見ためは変わらないが握るとボロボロにくずれてしまう。 |
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実験 2 目の前で膨らませたゴム風船[39K]。液体窒素につけるとどうなる? |
1 そのまま固まって硬いゴム風船になる。 2 ゴム風船は萎んでしまう。 3 破裂する。 |
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実験 3 温度を下げると超電導状態になるセラミック片に液体窒素を注いで[59K]超電導状態にする。その上に磁石をおくとどうなる? |
1 すごい力で磁石がセラミック片にくっつく 2 磁石がセラミック片の上に浮き上がる。 3 磁石が磁石でなくなってしまう。 |
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実験 1 鉄の細い線(台所用のたわし)が秤に乗っている。鉄細線に火をつけて燃やしたら[39K]この鉄細線は重くなる?軽くなる? |
1 重くなる 2 軽くなる 3 変わらない |
答えは |
実験 2 缶ジュースの空き缶に少量アルコールを入れて良く振り、上に紙コップをかぶせて[39K]缶の中のアルコールに火をつけるとどうなる? |
1 紙コップが飛び上がる。 2 空気が入らないので燃えない。 3 紙コップが激しく燃える。 |
答えは |
実験 3 空気の詰まったサッカーボール。空気を1リットル抜くと軽くなる、重くなる? |
1 重くなる 2 軽くなる 3 変わらない |
答えは |
実験 4 水を入れたフラスコを熱した時に出てくる気体は何? |
1 水蒸気 2 空気 3 酸素 |
答えは |
実験 5 炎色反応 銅、カルシウム、ホウサン、塩、醤油、ストロンチウム、カリウム、バリウムなどの水溶液(とは限らないが)を炎にかざすとどんな色? |
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答えは |
| 醤油 | |||||
(銅と同じ色) |
原油
我々が日常、プラスチックとかビニールとか呼んでいるものは全て「原油」から作られている。原油、とはつまり、石油の元である。原油というとエネルギー危機とか、車のガソリンとか、エネルギーの元、というイメージが強いが、実際には身の回りのプラスチック製品やビニール製品の元としても大変大事なものなのである。
形状記憶プラスチック
形状記憶シャツ、というのがあった。よく解らないが、アイロンをかけなくてもアイロンをかけたような風に見えるシャツ、ということらしい。しかし、布にどうやって形をおぼえさせるのか?そんなことは可能だろうか?勿論、ただの布では無理だろうが、原油から作った化学製品の糸ならば可能かもしれない。ここではそんな例の一つ、形状記憶樹脂の実験を楽しむことが出来る。形状記憶樹脂で出来たテープを好きな形に丸めてから、お湯の中につける。すると、どんな形に曲げてあっても元の平たいテープに戻ってしまう。逆にお湯の中で螺旋状に曲がるテープも作ることが出来る。これらは作られた時の形を記憶しており、温度を上げるとその形を思い出すので形状記憶樹脂と呼ばれている。
プラスチックを作ろう
原油からプラスチックを作るにはどうするか。一般的なプラスチックとは要するに炭素と水素、それに多少の酸素と窒素が複雑に結合したものに過ぎない。プラスチックのすごいところはこれらの原子をどう組み合わせるかでいくらでも種類の違う、つまり、性質の違う物質を作れるところである。プラスチックが原油から作られるのは、原油がプラスチックの主成分である炭素と水素の化合物の宝庫、つまり、炭素や水素、という原子とプラスチックという製品の中間の状態のものを豊富に含んでおり、プラスチックを安く作るのに適しているためである。採算さえ度外視すれば、そのあたりに生えている木を切って来て、空気中の酸素と窒素を少し加えればいくらでもプラスチックは作れる。ただ、そうなるとすごく高価なプラスチックになってしまって、存在意義がだいぶ薄れてしまうだろう。また、「安く作る」という点からすると、液体であることも見逃せない。大部分の化学反応は液体中で起きるから、最初から液体として存在している石油はプラスチックの材料としては好都合だ。石炭だって炭素と水素の化合物の宝庫ではあるのだが、固体であるためにプラスチックの原料には向かない。プラスチックが再利用しにくい理由のひとつはここにある。出来てしまったプラスチックは固体だから、まず、液体に戻さないと再利用できない。ここのプラスチックを効率良く液体に戻す、という作業が安価に出来ないために、出来てしまったプラスチックは原料としての価値が殆どゼロになってしまい、再利用されることなくゴミとして捨てられてしまうのである。
さて、ここではこの「液体である原油を原料にして固体のプラスチックを作る」という作業の最終段階を実際に、目で見ることが出来る。わずかコップ半分ほどのA液(ポリオール)とB液(イソシアート)を混ぜあわせるだけで、あーら不思議バケツ一杯のプラスチック(発泡ポリウレタン)が出来上がる。
原油からプラスチックを作る過程とは要するに、原油から炭素と酸素の化合物を取り出し、酸素や窒素を加えて段々に製品のプラスチックに近い化合物にして行き、最後に一気に固体にして終わる、という過程なのである。
電池を作ろう
このコラムを読んでいるような人なら、乾電池を分解したことがあると思う。電池の中には黒い棒と何やら液体の染み込んだ黒い粉が入っていた事と思う。黒い棒は炭素の塊、黒い粉に染み込んだ液体は電解質の水溶液。これらが金属のケースに入っているのが電池である。電解質、なんて言うと難しそうだが、実際には電解質なんていうのは僕らの身の回りにあふれている。食塩、なんて言うのも電解質だ。炭素棒、なんて炭でいいし、金属の容器の代わりはアルミ箔で十分。というわけで、備長炭(どうやら、普通の炭では駄目らしい。備長炭、は健康食品コーナーなどで水に入れて煮沸すると汚れが取れる、みたいな用途のために売られていることがある。)と食塩水とアルミ箔で電池を作ろう。作り方は至って簡単。まず、キッチンペーパーとか厚手のティッシュペーパーに食塩水をたっぷり染み込ませる。次にこの食塩水の染み込んだ紙で備長炭を巻く。更にその上からアルミ箔を巻く。これでおしまい。炭がプラス極、アルミ箔がマイナス極の電池の出来上がりだ。
この電池、「電流計をつなぐと確かに電気が流れている」とかいうケチな代物ではない。プロペラのついた模型用のモーターが、延々と回りつづけ[39K]、数十分続いた取材の間中、勢いが衰えることが無かった。
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この炭と食塩水とアルミ箔で作った電池の原理はいわゆる「乾電池」とは異なる。この電池で利用しているのは「空気電池」と呼ばれる電池の原理である。空気電池では、プラス極の反応物質として空気中に含まれる酸素が使われる。米村先生の即席電池の場合、炭は直接反応に関るのではなく、炭に含まれている気泡中の酸素と食塩水の中のイオンが反応して電気が出来る。炭は気泡毎に起きる微弱な電気を集めて大きな電流にするために使われる。このため、純度が高く、目にみえない小さな気泡が一杯含まれている「備長炭」が使われるらしい。ちなみに備長炭のかわりに冷蔵庫の脱臭剤を使った電池も米村先生のおはこの一つらしい。脱臭剤の本体は「活性炭」、つまり良質の炭だから、備長炭と同じ様に電池の材料になるのだろう。残念ながら、「脱臭剤電池」を見せては頂けなかったけれど。ちなみに、この空気電池、現在では小型のボタン電池などに用いられている原理だそうである。
空気で大砲を撃とう
さて、ここに映っているのは米村先生特製の空気砲だ。プラスチックで出来た何の変哲も無い四角い箱に、大きな穴が空いているだけのものだ。
箱の前方の壁には毛足の長い絨毯がかけられている。絨毯から目を話さずに、この箱を両側から平手で強く叩く。と、まるで目にみえない誰かが絨毯を手で叩いているかのように絨毯が波立つ。空気砲から飛び出した空気の塊が絨毯に当たっているのだ。箱を叩いただけで飛び出してくる空気の弾丸とはどういう形をしているのだろうか?
この形を見るために、空気砲の中で線香を焚いて出てくる空気の塊を目にみえるよう[39K]にしてみよう。
なんと、空気砲の「弾」は空気の輪だ。空気砲を叩くと空気の輪が出来てそれが一直線に飛んでいく様は実に不思議なものだ。
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空気砲の「弾」である「空気の輪」の正体はなんだろうか。実はこれは「渦」なのである。
( ペットボトルの中の渦巻)[39K]
渦の上と下がつながって輪になったのが空気砲の空気の輪の正体なのだ。
空気の渦、というのは一度出来ると形を崩さずにそのまま飛んでいく性質がある。今年の夏、大ヒットが予想されているアメリカのスペクタクル映画、「ツイスター」は竜巻の話しである。竜巻とはようするに巨大な渦巻である。一度出来た渦巻はそのままの形を保って動きまわるので巨大な渦である竜巻の寿命も長い。そして、空気砲の弾が絨毯の毛を蹴散らしたのと同じでしかも何万倍も巨大な力で通過点にある家や車を破壊し尽くす。空気砲は超小型の「竜巻製造器」というわけだ。
静電気でシャボン玉をあやつる
こどもの頃は誰しも一度は遊んだことがあるシャボン玉。ほのかに虹色に輝く美しさもさることながら、一瞬で消えてなくなる夏の花火にも似たはかなさがまた、たまらない。とは言うものの、一度でいいからシャボン玉を手にとってしげしげと眺めてみたい、と子供のころ思った人は多いはずだ。このおよそかないそうもない夢が静電気を使えば適えることが出来るのだ。もっとも手にとって眺める、とまでは行かないが。
まず、どこにもある塩ビのパイプを布でこすってマイナスに帯電させる。次に、先端にアルミ箔を巻いた特殊なストローでシャボン玉を作り、アルミ箔を介して素早く塩ビパイプのマイナス電気で帯電させる。こうなると、シャボン玉とパイプはマイナスどうして反発しあい、うまくやればいつまでもシャボン玉を浮かして[39K]おく事が出来る。
あるいは逆に、プラスに帯電したシャボン玉を作り、マイナスに帯電させたパイプとの間に引力を働かせて操ることも可能だ。今度はシャボン玉を作る時にパイプで触らないようにする。それだけでパイプとは逆のプラスに帯電したシャボン玉が出来上がり、引力で引き合うようになる。
更にマイナスとプラスに帯電したシャボン玉を近づけて合体させるという離れ業もも可能だ。
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塩ビパイプをこすると、静電気でマイナスに帯電する。どうして、パイプを布でこすると静電気が起きて帯電するのかまだ良く分かっていない(と思う。私は知らない。)。が、とにかく、塩ビのパイプを布でこするとマイナスに帯電する。パイプは絶縁体だから、一度パイプにたまった電気は逃げすにパイプにたまったまま。シャボン玉を作る時にアルミ箔を通じてこの電気を送り込んでやればマイナスに帯電したシャボン玉が出来る。一方、シャボン玉を作る時にパイプから電気を送り込まなければ、プラスに帯電したシャボン玉が出来る。これはよく解らないけれど、次の様な理由によるのだろう。摩擦で静電気が起きる、と言っても、何も無いところからマイナスの電気が突然現われるわけではない。というより、我々の身の回りには実はマイナスの電気が満ちあふれている。ただ、マイナスの電気と同量のプラスの電気も存在するので差し引きゼロでプラスにもマイナスにもなってないように見えるだけである。塩ビパイプをこすってマイナスの電気を起こすと、その分、人間の体の中にあるマイナスの電気が少なくなってプラスの電気が残り、人間の体はプラスに帯電することになる。このプラスの電気がシャボン玉を作る時にシャボン玉に移ってプラスの電気を持ったシャボン玉が出来る。
それから、プラスのシャボン玉とマイナスのシャボン玉が合体する寸前、お互いの回りをくるくる回り出すのに気付いただろうか?これは、一般的な性質で引き付けあう力が重力や空気の流れ力でも構わない。とにかく、引き付けあうものはそばにくると回りはじめる性質がある。実は、巨大な竜巻の回転のエネルギーもこの性質から生まれるのだ。もっとも、竜巻が静電気力で出来ているわけではない。詳しいことは話しが長くなるのでまた、今度。