インタラクティブ・サイエンス・コラム・メイル
1997/10/18号 (不定期刊)
本日のお題:粉塵爆発
今ではすっかり斜陽産業の代名詞になってしまった炭鉱だが、かつては国の花型産業であり、石炭は「黒いダイヤ」と呼ばれていた(まあ、ダイヤモンドも石炭も炭素で出来ているのは確かだ。名付けた人はそこまで理解していたんだろうか?)。炭鉱から石炭を掘り出すのは危険の多い作業だった。落磐による生き埋め、ガス中毒、あるいは、地下水による水攻めなど。そんな炭鉱の危険の一つに「炭塵爆発」というものがあった。
一見、何も無い様に見える坑道の中で突然、爆発が起きるのである。この爆発はどうして起きるのだろうか。炭塵爆発、という言葉通り、石炭の粉が爆発するのである。しかし、どうやって?石炭の粉にマッチを近づけたところで別に爆発するわけではない。実は炭塵爆発は空気中に石炭の粉が舞い上がったために起きたのである。
空気中に舞い上がった石炭の粉はなぜ爆発するのだろうか?その前にまず、そもそも爆発とは何か、ということを考えて見よう。爆発とは気体や液体が一瞬にして気体になることにより起きるものである。気体は固体や液体にくらべてずっと体積が大きいので、例えわずかな量の固体や液体でも一気に気体になると体積が1000倍くらい膨張することになる。いきなりこんなに体積が膨張したら、ものすごい勢いで広がろうとするだろう。この衝撃が爆発に他なら無い。
固体や気体を一気に発生させるにはどうすればいいか?物を燃やす、なんていうのは典型的な方法だ。ロウソクや紙は燃えると無くなってしまうが、それは大部分が水蒸気や二酸化炭素という気体になって飛んで行ってしまったからだ。ただ、ロウソクや紙を燃やしても爆発にならないのは燃え方がゆっくりだからだ。紙やロウソクだって激しく燃えれば十分爆弾になる。
よく飛行機に乗ると非常時の説明のビデオが流れるがその中で「気圧が低下致しますと自動的に酸素マスクが降りて参ります。その場合、タバコの火はすぐにお消し下さい」とかいうアナウンスがあると思うが、あれは酸素マスクから洩れ出た酸素が周囲にある物の燃焼を加速して爆発させかねないからだ。
空気中に浮遊している炭塵は、ちょうど酸素がいっぱいあるのと同じような状態におかれている。酸素の濃度は普通だけれど、炭塵の粒は小さいのでわずかな酸素でもあっというまに燃えることが出来る。一個一個の炭塵の燃焼は大したこと無くてもたくさん集まれば膨大な燃焼になり爆発につながるのだ。
我々が日常的に粉塵爆発に接することはまずないだろうが、粉塵爆発は空気中に小麦粉や砂糖の粉が浮遊しても起きる。状況が変わればものの性質は全く変わってしまう物なのだ(ケーキの元から爆弾ができるわけだ)。
粉塵爆発:家庭内で簡単にできる実験の例がいろいろあげられています。
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