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     インタラクティブ・サイエンス・コラム・メイル

           1997/10/25号 (不定期刊)

           本日のお題:月が出来た理由(わけ)


  月。科学好きな人ならば、誰しも、星空に憧れたことがおありだろう。僕も御多分に洩れず、ほんの一時だけど子どもの頃、星空に憧れた口だ(すぐに飽きてしまって、高価な天体望遠鏡は埃を被ってしまったけれど)。そんな星空の中でひときわ明るく輝く天体、それが月だ。まさに夜の女王の名にふさわしい。そして、人間が訪れたことのある地球以外の唯一の場所。今回はそんな月についてPlanetary Report1997年9/10月号に載った「月の小史」から紹介しよう。

  月の大きさが地球に比べて不釣合に大きい、という話を聞いたことがあるだろうか?地球の直径は月の直径の4倍「しか」無い。普通、こんなに大きな衛星を持つ惑星は存在しない。火星の衛星(フォボスとダイモス)の直径は火星の直径の1/100以下だし、木星の衛星の中で一番大きいガニメデさえ、その直径は木星の1/30に過ぎない。冥王星の惑星だけは、冥王星の大きさの半分もあるが、冥王星自体の大きさが月よりも小さいので、どちらかというと「二重アステロイド(小惑星)系」と見た方がいいらしい。大体、衛星、というのは太陽系の元であるガス雲の中から惑星が出来た時の「余り」で出来ると思われているから、1/4の大きさの衛星を引きつれた惑星、というのはちょっと奇妙ではある。

  最近の「月誕生のシナリオ」はこんな感じだ。まだ地球が出来たばかりの45億年程前、現在の火星ほどの大きさの天体が地球に衝突した。この時、地球の表面から削りとられた部分が宇宙空間に散乱し、地球の周囲を周回するこのかけら達は土星の輪のようなきれいな輪を描いたと言う。そのかけらも、44億5千万年までには、くっついて月の原型ができたらしい。

  出来たばかりの月はかけらが隕石となって降り注ぎ、その衝撃で表面がドロドロに融けたマグマ天体だったらしい。しかし、月は、地球の「表面」をこそぎ取ったかけらの集合だから、地球の中心の高熱の内核、外核をもっておらず、隕石の衝突が無くなる(つまり、飛び散ったかけらが全部集まって月になってしまう)と同時に冷え切った岩の固まりとなってしまった。これが44億年から40億年前くらいのことらしい。30億年くらい前には最後の「火山」も噴火を終え、月はそれ以来なんの変化もなく、天空にたたずみ続けている。

  今のところ、この月の誕生シナリオは一番有力な「説」というものに過ぎないけれど、これがもし本当なら、月こそまさに血肉を分けた地球の兄弟だったわけだ。残念ながら、月の誕生は地球に生命が生まれるずっと前の話で、それ以後の地球の歴史にそれほど大きな影響は無かった。それでも、潮の満ち干なんていうのは月のおかげだし、全く関係ないと言うわけでもない。月が無かったら地球はどうなっていただろうか?今より、少しだけ重くて(1パーセントくらい)、その代わり、闇世を照らしてくれる満月は無い。そうしたら、人類の宇宙への興味はずっと薄くて科学も遅れていたかも知れない。月、それは地球が自分のごくわずかな部分を削り取って作り上げた生命のための夜のランプだったのかも知れない。

  あー、すっかり感傷的になってしまった。では、また。

月について:ナインプラネッツ日本語版より


  Planetary Societyが刊行する隔月刊のパンフレット。ぺらぺらだが、読みごたえがあるしっかりした記事を載せてくれる。残念ながら英語版だが、英語に自信がある人にはお勧め。Planetary Societyに入会すると送って貰える。

  海外会員は45(学生は30)ドル/年。 入会はオンラインで可能(要クレジットカード)。

  ナショナルジオグラフィック英語版が年45ドルなのに比べるといかにも高いが、会費の殆どは学術研究の支援に使われる(まあ、ナショナルジオグラフィックだってそれは同じなのだが)。時々、寄付のお願いも来る。先日もSETIに100ドルも寄付してしまった!


○インタラクティブ・サイエンス・コラム・メイル1997/10/25

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