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     インタラクティブ・サイエンス・コラム・メイル
           1997/12/07号 (不定期刊)
     本日のお題:惑星の輪にできる筋のわけ
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  先頃打ち上げられた土星探査衛星カッシーニはとある有名な人物にちなんで名付けられた。その人物の名前はいうまでもなくカッシーニだ。実のところ、僕は天文ファンでないので、カッシーニがなんで有名なのかちっとも知らないのだが、カッシーニの間隙、という言葉だけは良く知っている。カッシーニの間隙とは、あの美しい土星の輪に空いている細い隙間の事である。
 ボイジャーなどの探査衛星による撮影のおかげで、今では土星の輪に空いている隙間はカッシーニの間隙だけではないことを我々は知っている。カッシーニの間隙の他に地球からでは見えないこまかな隙間が無数に空いているのだ。土星の輪はどちらかと言うとそれ自体がお菓子のバームクーヘンの様に非常に細かい隙間が、びっしりと折り込まれたような格好をしているらしいのだ。
 土星の輪は、氷の固まりが無数に集まって出来ている。固まりの大きさは一定では無くてちいさな物から大きな物まで広く分布していて、その頻度は半径の3乗に反比例しているという(つまり、半径が倍の大きさの氷の固まりは2の3乗分の1で、数が八分の一しかない、ということ)。そんな無数の氷の固まりを遠くから見ると一枚の輪に見えたり、また、輪に隙間が折り込まれたりしている様に見える、ということなのだ。
 そもそも、どうして土星の輪はあんなところにああいう大きさで存在できるのだろうか?あの輪の位置はいかにもそれっぽいではないか?輪の幅が半分だったり、倍だったり、大きさが半分だったりしたらあれほど美しくないのではないか?この答えは結構、簡単で要するに重力の法則に従って、土星の周りを氷の固まりが回っていれば何回も衝突しているうちに自然にあのような薄い輪の形になるらしい。最近では、細かな隙間の成因まで解ってきている。もし、最初に土星の輪が隙間の無い一様な氷の集合だとしても、氷の固まりがお互いにぶつかりあい、かつ、お互いに重力で引き合うだけで、自然にああいうきれいな隙間が折り込まれてしまうらしいのだ。こういうことが解ってきたのは最近のコンピュータの進歩のおかげで土星の様な大きな星の周りをちいさな氷のかけらがお互いに万有引力をおよぼしながらぶつかりあって運動しているとどうなるか、ということを計算できるようになったからだ。人間の目にはきれいに見える年輪の様なきれいな模様も、別に何か特別な意味があるわけではなく、自然に出来たものだということだ。ちょうど、地球の自然に見られる様々な美しい風景が風や水の力だけでつくり出されるのと同じようなことなのだろう。
 そばを通り過ぎるだけだったボイジャーと異なり、土星のそばに長く留まるカッシーニは、より詳細なデータとより鮮明なカラー写真を送ってくれることだろう。そこには土星の輪のより詳細なデータも含まれる予定だと言う。カッシーニのデータは今度は輪のどんな新しい姿を見せてくれるだろうか?バームクーヘンはそばでみてもやっぱり、バームクーヘンなのか?それとも?そのきれいな縞模様は火星の運河の様にそばで見ると跡形も無く消え去って、全然、別のものが見えてくるかも知れない。それはどんなものだろうか?いまから楽しみにしておこう。
 
 カッシーニ計画:

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