正直言って、なんであんな形なのかまだ分かっていない、というのが本当のところだ。結晶の科学はかなり歴史もあり、いろいろわかっていることが多いのだが、雪の結晶はその中でも難問中の難問である。勿論、何も分かっていないわけではない。多少は分かっていることがある。例えば、冷蔵庫で氷を作るのと違って、雪の結晶は水が凍ったものではなく、水蒸気が直接凍ったものだ。まず、これが根本的に違う。勿論、冷蔵庫でも水蒸気が直接凍ることはある。今の冷蔵庫ではとんと見なくなったが、昔の冷蔵庫では良くみた「霜」というのは、水蒸気が凍ったものだ。寒い日に庭にできる「霜」とこれは同じものである。寒い日に息をはーっと吐くと白くなるが、あれは息の中の水蒸気が凝結して細かな水の粒になったものだ(つまり、雲と同じ)。うんと寒くなると息が直接凍って「霜」になるのだという。
じゃあ、水の中では決して雪の結晶にはならないのか?ああいうきれいな形は無理だが、単に角が生えた六角形くらいならできる。水とは限らないが、何かの液体を凝固点よりちょっとだけ高い温度にしておき、そこに冷たい針のようなものを差し込んで針の周りだけ冷たくなるようにする。そうすると針から小さな結晶が生えてくるがその結晶の形がうまくするときれいな六角形になってくれる。まあ、でも雪の結晶ほどきれいにはならない。けっきょくのところ、冷蔵庫の氷と雪の結晶の最大の違いは「凍らせ方」にあるわけだ。同じものでもやり方でいろいろな形ができる。こういう条件による結晶の形の出来方の科学を「結晶成長」の研究というが今では工学的な応用まである大きな科学の分野である。まあ、この話はまた今度にしよう。
雪の結晶を世界で初めて実験的につくった中谷がうさぎの毛を使ったのはあまりにも有名だが、まだまだ、雪の結晶の科学は完成していない。科学にはまだ、おもしろいことが残っている、身近なことでも。
結晶成長:
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