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=== Interactive Science Column Mail ==================================
     インタラクティブ・サイエンス・コラム・メイル
           1998/2/14号 (不定期刊)
     本日のお題:シバの仮説
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またも配信の間隔が空いてしまった。ちょっと科学MLの運営に注力し過ぎてこっちがおろそかになってしまった。申し訳ない。さて、今回は971004「大絶滅は地球のリズム?」の続編だ。前回は、絶滅にはある統計法則が関わっており、この様なきれいな法則が出るからには何か地球に内在的な理由があるのではないか?という説を紹介したが、一方で外在的、つまり、地球の外に理由がある、という考えも根強い。そのもっとも有名なものが例の巨大隕石が落ちて来て恐竜が絶滅したシナリオ、である。

最近では、大絶滅は全て巨大隕石の落下にトリガーされて起きたのだ、という過激な説が登場しつつあるらしい。これはシバの仮説とよばれている。シバ、とはヒンズー教に出てくる破壊と再生を司る神で総てを破壊する死の神でありながら、一方で、破壊の後には再生ももたらす、というまさにこの仮説にぴったりの神である。なにしろ、大絶滅の後には、新しい種が爆発的に発生して、絶滅による空白をうめるのだから。

最近の研究によると隕石が「シバ神」の役目を果たしたのは恐竜が絶滅した時だけではなく、何度もあり、過去5億年以上(つまり、「まともな」生物が誕生したカンブリア記以降ずっと)に渡ってほぼ3000万年おきに起きている大・中・小規模の大絶滅のかなりの割り合いが隕石の落下によってひき起こされた可能性があるという。これは化石記録から再現された絶滅ペースと世界各地に残された巨大隕石の痕跡(隕石落下でできるクレーター、や、隕石に多く含まれているイリジウム層の堆積、気候変動の記録、など)とを突き合わせることで判明した。驚いたことに隕石の落下で出来たクレーターの大きさと絶滅の規模の関数関係まで不完全ながら解り始めている(当然ながら、クレーターがでかい程絶滅の規模もおおきい)。その結果では大絶滅をトリガーするには少なくとも直径60キロ以上の巨大クレーターができる程度の大隕石の落下が必要らしい。
さて、では、3000万年おきというリズムはどこからくるのか?まだ、仮説の段階に過ぎないようだが、太陽系が銀河の中を周回する軌道そのものに原因があると思われているようだ。銀河系の想像図を見たことがあるかたならだれでも気付かれるように、銀河系はのっぺりとした星が一様に満たされた一枚の板では無く、渦巻き状の腕を持った回転体である。太陽系はその中を周回しているが完全な円軌道を描いているのでは無く「上下」、つまり、円盤の厚さ方向に上がったり下がったりしているのだという。そしてこの上下運動の周期から計算される太陽系が円盤の厚さの中心、つまり、星の密度が一番濃いところを通過する周期が大体3000万年なのだという。

かつて、生命の進化は単調な進化=よりよいものへと変化しつづけるプロセス、と思われていた時代もあったが、今ではそうではなくて、地球との共生進化、ということが言われている。つまり、地球と言う惑星の進化と生命の進化は切り離せない、という思想である。しかし、もし、シバの仮説とその解釈が正しければ、実は生命は地球どころかこの銀河系と共生進化したことになる。ちっぽけな惑星上のささいなイベントに過ぎない生命の誕生と進化も壮大な銀河史の中に折り込まれたひとつのイベントなのかも知れない。

参考文献:The Planetary Report 1998年1・2月号


○インタラクティブ・サイエンス・コラム・メイル1998/1/29(購読者:1171名)
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