月が落下しないワケ  

月が落下しないワケ


  地球が丸いか平らか、というのはちょっと前には論争の的だった(もっとずっと前には決着がついていたのにそれを忘れてまた喧嘩していただけなのだが、実は)。地球が丸い、という証拠にはいろいろあるが、一番決定的な理由は「月が地球の上に落ちて来ないから」というものだ。「月が地球の周りを回っている」というのは言葉のあやで、実際には月は地球に向かって落ち続けている。

じゃあ、なんで月が地面に落ちて来ないのか、というとつまるところ、それは地球が「丸い」からだ。大砲の弾を地面に水平に撃ち出す場合を考えよう。撃ち出された弾はどんなにスピードが速くてもいつかはゆるいカーブを描いて落下し、地面に激突してしまうだろう。しかし、このカーブは弾の速度が速ければ速いほど緩やかだろう。

ここで、地球の丸さが生きて来る。普段の生活では地球が丸いことに気づくことはまずないが、このわずかな「丸さ」のおかげで、非常に速く飛んでいる物体(例えば、月)は地面には永遠に落ちて来ない。地球の重力に引かれて月はゆっくりとカーブを描くが、地球も丸いので、月はなかなか落ちて来ない。そうこうするうちに、ぐるっと一周して元の場所に戻って来る。後はこの繰り返しで、月は永遠に地球のまわりを円を描いて廻り続けることになる。現実問題として、月ははるか頭上ではなく地面すれすれを落ちずに飛ぶことができる。もっとも、その場合の速度は(月の大きさを無視したとしても)秒速7.9kmというとんでもない速度だ(新幹線の百倍近い)。同じようにこの速度で飛ぶ弾丸を水平に撃てば、弾丸はぐるっと地球を一周して君の背中に当たるだろう(空気摩擦がなければ、だが)。

「じゃあ、地球が丸くなくて別の形だったら、月は地面に落ちて来るのか?」と思うかも知れない。まあ、それはそうなんだが、地球が丸い、というのもまた、重力のおかげなのだ。もし、地球が丸くなければ、出っぱったところは崩れ、へこんだところは埋まって結局、丸くなってしまう。月の軌道が丸い、ということと、地球が丸いということは同じ理由なのだから、月はどんなばあいでも地面には落ちて来ない。もっとも、どこか我々の知らない別の世界では別の「方則」が支配していて、三角の地球のまわりを三角形の軌道を描いて月が回っているかも知れない。


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