最近、風もすっかり爽やかになり、新緑も目にまぶしい季節になった。残念ながら、僕の仕事部屋は都心にあるので、風や緑を心から満喫するというわけには行かないのだが、それでも、この時期の風は心地よい。そんな幸せな気分を運んでくれる風はどこから吹いて来るのだろうか?
我々が感じている風、つまり、空気の流れは、元をたどれば全地球的な大気の動きのごく一部分にすぎない。洗面台に水を張り、手でかき混ぜて見よう。そうすると、水はいろいろ複雑な動きをし、行ったり、来たり、渦を巻いたりするはずだ。洗面台の中の水がいわば地球上の大気であり、洗面台の底は地表、ということになる。地球上で吹いているどんなわずかな風も、この全地球的な大気の運動からポツンと孤立して存在することはない。そういう意味では地球上のすべての風は全部お互いにつながっているわけだ。君の部屋の窓から吹き込んで来るそよ風は、いま、こうやって僕がこの文章を書いている部屋のすぐ外を吹き抜けている風そのものなのかも知れないのだ。
もっとも、洗面台と違って、地球上には空気をかき混ぜる「手」なんて存在しない。じゃあ、何が地球の大気を動かし、風を生んでいるのか?これはちょっと前に風が無いと生命は死んでしまうという話をしたときにも説明したけど、空気の温度差だ。暖かい空気は軽くなって上昇し、冷たい空気は重くなって下降する。だから、暖かい空気と冷たい空気が一緒にあるところでは必ず空気の運動が生じてそれが風になる。
地球上で冷たいところと暖かいところはどことどこかな?そう、赤道が暖かいところで北極や南極だね。地球上では赤道と北極・南極の間をいつも風が吹いている。そしてこれがめぐりめぐって君のところにやってくる。
最後に、どうして極は寒くて、赤道は暖かいのかな?じつはこれも、地球が丸いせいなんだ。ちょっと絵を描いてみれば解るけど、赤道付近では太陽の光は地面に垂直にやってくるけど、極では地面に平行にやってくる。それで赤道の方が地面に太陽の光がよくあたって暖かくなり、極では逆に寒くなる。我々が春のそよ風を楽しむことが出来るのもつまるところ、地球が丸いおかげなんだな、つまり。地球が平だったら、風の吹き方はずいぶんと変わってしまうだろう。全く風が吹かないわけでは無いだろうけど。