雫、というのは丸い形をしているものだ。空から降って来る雨、水しぶき、そして、葉に宿る朝露さえ丸い。この丸さはどこからくるのか?
「もっとも単純な形だから」というのは結構、もっともらしい答えだ。三角や四角に比べたら、丸というのはいかにもありそうな形ではある。例えば、宇宙の星は全て丸いではないか。特に理由が無ければ塊はいつも丸くなる、なんて「方則」がありそうに見えるがそうはいかない。星々が丸いのと、水滴が丸いのは全然違う理由だ。 水滴が丸いのは水滴を作っている水が空気を嫌ってなるべく表面が少なくなるように集まろうとするからだ。三角や四角だと角のところに居る水の露出度が高いので嫌がって中にもぐり込もうとするためにそういう角はすぐにへこんで無くなってしまうので最終的に丸い形ができあがる。
ところが、この傾向は水滴が大きくなるとだんだん弱くなってしまう。水滴の大きさ(例えば直径)が倍になると水滴の表面積は4倍にしかならないけど、水滴の中の水の量(体積)は8倍にもなってしまう。そうなると、「丸くなりたい」と思っている表面に露出している水の水全体に対する割合は減ってしまうから、結局、「丸くなりたい」という表面の水の要望が通りにくくなる。バケツ一杯の水をぶちまけても、決して一個の大きな水滴になったりしないのはそのためだ。
一方、星が丸いのは重力のおかげで、こちらは大きければ大きい程丸くなりやすい。大きな星ほど重力が強いからだ。平らにしなくてはならない面積の方は相対的にどんどん小さくなるから水滴とは逆に大きい程丸くなりやすい。
表面が大事だ、というのは他にもある。例えば、太った人ほど汗かきなのも同じ理由だ。体がつくり出す熱の量は体重に比例しているけれど、熱の発散は体の表面積にしか比例しない。で、太った人ほど熱を逃す能力が低くなり、汗をかいて補う羽目になる。これは人間だけでなく、動物でもおんなじだ。ネズミの様な小さな動物は熱の発散が体重に比べて大きいので体温を維持するためだけにも常に食べ続けていなくてはならない。逆に体が大きければ体温が下がりにくい。恐竜みたいな巨大な動物は体の大きさだけでも体温を維持できたのではないか、という説さえある。こんなささいな「表面ノ方則」でも実にいろいろなことに関係している。