液体と気体の間  

液体と気体の間


水は熱すれば水蒸気になる。逆に空気は冷やせば液体になる。でも、液体でも気体で も同じ原子や分子から出来ている。液体が気体になったり、気体が液体になったりす るのはなぜだろうか?

液体と気体の違いは殆ど密度の違いだけだ。同じ原子や分子が狭いところにひしめき あっていれば液体になり広々としたところで自由に運動していれば気体になる。ただ それだけのことだ。

じゃあ、液体の中の原子や分子を狭いところに押し込めているのは何の力か?例えば 、コップ一杯の水の場合、それは空気の圧力に他ならない。水が水蒸気になるために 熱してもらわなくてはならないのは、空気の圧力に打ち勝つためのエネルギーを得な くてはならないからだ。

高い山の上に上れば、空気は薄くなり、空気の圧力は弱くなる。水を水蒸気に変える ために必要なエネルギーも少なくなり、水は普通より低い温度(100度以下)で沸 騰するようになる。このおかげで、高い山の上ではご飯をうまく炊くことが出来ない 。水を沸騰させても平地にいるときほど温度が上がらないので米に良く火が通らない のだ。

実のところ、平地で米を炊くときには水の温度は100度よりいくらか高くなってい る。炊飯器の中でお湯が沸騰すると、水蒸気が容器一杯に満たされて容器の中の圧力 が高くなり、水が沸騰するのに100度よりもっと高い温度を必要とするからだ。こ のおかげで、固い米も柔らかく炊き上がる。

逆に、空気が全然、無いところ、つまり、真空に行ったらどうなるだろうか?水の中 の原子や分子を狭いところに押し込める力が全く無いのだから水はたちまち蒸発して 水蒸気になってしまう。それは我々の体の中の水分も同じことだ。よく、宇宙飛行士 が全身をすっぽり覆う宇宙服を着ているだろう?空気が無くて呼吸が出来ない、とい うだけなら、あんな大げさな格好じゃなくて酸素マスクだけつけていけばいいと思わ ないか?宇宙飛行士が体をすっぽり覆う宇宙服を着なくてはいけない理由の一つは、 真空のゼロの圧力にさらされて体内の水が蒸発することを防ぐためだ。実のところそ れは「蒸発」なんて生易しいものじゃない。裸で真空に出たら、空気が無いせいで窒 息する前に、血液が沸騰しその時発生する水蒸気の力で、人間の体は内側から破裂し てしまうだろう。宇宙服とは、地球の環境を宇宙空間に持ち出すためのいわばミニサ イズの宇宙船のようなものなのだ。


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