音と言うのは遠く離れると劇的に聞こえにくくなる。面と向かって話している 時は何の問題も無い声の大きさでも100mも離れたらまず聞こえない。よく 「遠く離れると音が減衰するから」という言い方があるがこれは全然正しくな い。あえていうなら遠くまで音が届かないのは音が「広がって」しまうから。
音にはあまり方向性がなくて、ある方向を向いて声を出しているつもりでも、 音は全ての方向に向かって広がって行く。しゃべっている人のまうしろに立っ ていても声が聞こえるだろう?これこそ、人間がどちらに向いて声を出そうが 音は全ての方向に向かって広がって行くことの証拠にほかなら無い。
さて、音がすべての方向に広がって行くとしたら、どの様に弱くなって行くの だろうか。答えは距離の2乗に反比例して、である。つまり、2倍遠くなれば、 音の強さは4分の1になってしまう。これは、音が広がるときに音を発してい るところを中心とした球面上に均等に広がって行くからだ。距離の2乗に反比 例ということはこの球面の面積に反比例して、ということなのである。
昔、電話など無い頃に「伝声管」というものがあった。これはただの長いパイ プなんだけれど、これに向かって叫べば、うんと遠いところ(100mくらい とか)でもまるで目の前で喋っているようにはっきりと声を聞くことが出来た。 これはパイプの中では声が広がらないから弱くならないおかげなんだ。広がり さえしなければ、音はなかなか弱くはならない。
これに比べると光の方はなかなか弱くならないように見える。しかし、光だっ てうんと長い距離を進むうちにはやはり広がって弱くなってしまう。夜空に輝 く星の殆んどは近くで見れば太陽の様に明るいのだが、あまりに遠いので光が 弱くなってしまったのだ。
ここでもし、「あれ、でも遠ければ遠い程、星の数だって多いはずだから、個々 の星の光は弱くなっても全体としては同じじゃないの?」って思った人がいた ら、なかなかするどい。もし、宇宙に星が一様に分布していたら、夜空も一様 にボーッと光って見えるはずだ。それどころか、昼も夜も無いことになる。だっ て、いくら太陽があったって、それと同じくらい夜空は一様に輝くことになる のだから。